<第4回> 
チリ・イースター島への旅
太陽や星たちに見守られたモアイと対面
文/岩井加代子

 子どものころから憧れていたイースター島。日本からずいぶんと離れた地球の裏側に、不思議な顔をした巨大なモアイ像が遠くを見つめている。誰が、何のために、どのようにして造ったのか、モアイは神秘や謎に包まれている。大きな大平洋のど真ん中に点のように浮かぶ小さな島。イースター島は、世界のなかで一番か二番めに行ってみたい場所だった。

 ふつう南米旅行をするときは、日本からまずペルーやブラジルなどを目指す人が多いだろう。欲張りな私はついでに南の楽園も楽しもうとタヒチの島々を巡り、そこからイースター島に入って南米旅行への第一歩をスタートさせた。十数年憧れ続けたイースター島のモアイにやっと会える。

 島に着き、宿の主人の弟さんがバイクで島を案内してくれることになった。バイクの後ろに乗り、赤土のでこぼこ道を走る。アカハンガに行ってみたが、大半のモアイ像はうつ伏せに倒れていて、大地にしっかりと立つような存在感がある像は見かけられない。さらにバイクを走らせ、ラノ・ララクの石切場へ向かう。ここは10〜11世紀ごろに最も多くのモアイが造られた場所で、小高い山に数百体の像が点在する。完成された形で中腹にどっかり立ちすくもの、造りかけで放置されたものなど、荒涼とした風景のなかの大勢のモアイたちは、ここで1000年近くの時を過ごしてきたのだった。

 次にアナケナヘと向かった。白い砂浜の上に椰子の木が空高く伸び、5体のモアイが海に背を向けてきちんと並んでいる。まるでポストカードに出てきそうなほど美しい眺めだ。大平洋をバックにしたモアイと向き合って、サンドイッチを食べながらランチタイムを楽しんだ。

 島中に点在する遺跡を見るには、とてもじゃないが一日では足りない。島で唯一のメインストリートがあるハンガロア村のレストランで、ドイツ人女性の旅行者たちと出会った。彼女たちは数人でジープを借りて島を回るという。まだ見どころを半分くらいしか回っていなかったので、私も彼女たちと一緒にほかのモアイ遺跡を訪ねることにした。

 先日のバイクは馬の背中で揺られていたようだったが、ジープはそれにも増して振動がすごい。特に悪路にぶつかると、ジェットコースターの中にいるようで、なかなかエキサイティングで楽しい乗物だ。

 この女性だけのジープの旅で、忘れられない遺跡がアキビである。目の前に広がる大平洋の海をじっと見つめる7体のモアイ。その視線の先はいったい何があるのだろうか。イースター島にまつわる数々の物語が、いくつも頭に浮かんでは消えていく。ここにしばらく佇んでいると、子どものときにイースター島の存在を初めてを知った、驚きや感動が静かに蘇ってくる。アキビは数あるモアイ遺跡のなかで、個人的にもっとも心に残る風景となった。

 村に帰ってレンタカーを返し、宿へ向かうと、正面 にすごい色をした夕焼けが見えた。みんなで急いで見晴らしのいい海岸へ走る。燃えるようなオレンジ色に空がぐんぐん染まる。カメラのフィルムはなくなってしまったが、しっかりこの夕日の色は心に刻みつけておこう。その日の夜は降りそうなほど、満天の星が空に現れた。イースター島のモアイ像は、輝くような太陽や星たちに囲まれて今でも遠くを眺めている。


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