| <第6回> ぺルー・インカ帝国 最後の皇帝アタワルパの足跡を追う 文/岩井加代子 |
広大な南米大陸大平洋沿岸を制したインカ帝国。アンデス最後の文明であり、北はコロンビア南部、南はチリ中部まで、アンデス山脈の南北およそ4000キロにも及ぶ大帝国であった。
インカ帝国が出現する以前、ペルーはいくつかの地域に分かれ、さまざまな文明が表れては消えていった。クスコを中心としたインカ帝国の成立は、紀元1200年ごろといわれているが、当初は帝国というよりも部族と呼んだほうがふさわしい程度の小規模だったという。ところが、宿敵チャンカ族との戦いに勝利を治めたあとは急速に征服を進め、あっという間に一大帝国へとのしあがっていく。 その後ヨーロッパでは、コロンブスをはじめとした大航海時代が訪れる。野心家のスペイン人フランシスコ・ピサロも黄金帝国とうわさされるインカ帝国を目指す。1532年11月、ピサロはペルー北部のカハマルカで静養中のインカ帝国の皇帝アタワルパを捕らえる。ピサロはインカ帝国全土から集められた金銀、財宝を奪いつくし、アタワルパは翌1533年、処刑されてしまい、インカ帝国は滅亡した。征服者ピサロは首都をリマに移すが、1534年、同士アルマグロの息子によって暗殺されてしまう。そしてピサロの死を知った本国スペインは、新しい総督と行政官をペルーに送り込み、本格的な植民地統治を始める。 そんな興味深い歴史を持つインカに、魅力を感じる人も多いだろう。幻の空中都市マチュピチュ、建築技術の高さがうかがえる石組みや味わいのある街並のクスコなどは、ペルーの顔といってもいい代表的な観光スポットである。マチュピチュやクスコのように有名ではないけれど、私が訪れたペルーの場所で忘れられない場所にカハマルカがある。カハマルカはペルー北部にあり、インカ最後の皇帝アタワルパにまつわる場所がいくつもある。カハマルカは温泉が出るので、アタワルパがつかった「インカの温泉」がある。外国人の姿はほとんど見られず。地元のペルー人が温泉に入りにやって来るのんびりした温泉だ。それからアタワルパがスペイン人につかまり幽閉された「身代金の部屋」という、今では博物館になったところもある。アタワルパがピサロに「この部屋を金で一杯にするから釈放してくれ」と頼みこみ、本当に金で埋め尽くされた部屋だ。この交渉に承諾したかのように見せかけたピサロは、結果 的にはアタワルパを処刑してしまうが……。このようにカハマルカは皇帝アタワルパの面 影が色濃く残る場所なのだ。 巨大遺跡を築き、個性的な風合いを持つ土器や織物を生み出し、文化の香り高いインカ帝国。神秘の世界に包まれたインカは、滅亡して500年経った今でも人々の興味を惹きつけてやまない。
写真提供:PROM PERU |